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September 28, 2022

新しい2PPベース微細造形のコンセプトが、機能的なワイヤレスマイクロデバイスの製作を実現

制御した方法で動き、タスクを実行できる1㎜の半分に満たないサイズのワイヤレス小型デバイスは、ヘルスケア、マイクロ流体力学、ロボティクスなどの分野において有望なツールです。磁気駆動型マイクロデバイスは、その高速応答性、操作精度、機能性、コンパクトサイズにより、強い関心を集めています。しかし、異なる機能性材料を、異なる3D磁化プロファイルと複雑な3D形状を有する1つの磁気マイクロデバイスに同時に統合することは大きな課題です。そこで研究者らは、先進的な磁気マイクロデバイスの作製を目指し、モールディング・インテグレート・レーザー直接描画と呼ばれる、革新的な微細造形方法を開発しました。これはNanoscribe2光子重合技術に基づいており、特徴として、モールディング用のネガ型テンプレートを作製するために、ポジ型フォトレジストが使用されます。

SF のような話ですが、小型ワイヤレスロボットは、医療、マイクロ流体力学、その他多くのアプリケーションにおいて、マイクロスケール・マニピュレーションの未来を制するとされています。そのマイクロスケールにおける、効率的で応答性の高い操作性は、細胞、組織、粒子、微生物、極微量流体などを含む微小物体の制御を網羅します。モバイルやワイヤレスのマイクロデバイスの機能は、例えば、細胞のマイクロマニピュレーション、マイクロサージェリー、バイオプシーアプリケーション、創薬やドラッグデリバリーなどに応用できる可能性があります。

しかし、特定のタスクを実行するために、極めて小さい機能性マイクロデバイスの形状や動きを形成することは実に困難です。磁気駆動・制御型マイクロデバイスは、いかに刺激に素早く応答し、マイクロスケールでいかに精密にタスクを遂行できるか、そしていかに小さくできるかに利点をもつことが証明されています。想定されるマイクロロボットの複雑な動きや設計のため、異なる磁気プロファイルを持つ異種材料を一つの設計に統合するためには、より精巧で新しい微細造形手法が必要です。

マックス・プランク研究所チューリッヒ工科大学ヴァンダービルト大学コチ大学からなる研究チームは、ワイヤレス磁気駆動型マイクロデバイスを製作するための新しい手法を研究し、提案します。このマイクロデバイスは制御された方法で動き、その動きは3次元方位のすべてにプログラム可能です。この研究プロジェクトは、Nature Communications誌で特集されました。

ポジ型フォトレジストテンプレートへのマルチ・ステップ・モールディング

新しい微細造形方法の出発点は、成形用のネガ型テンプレートを作製するためにポジ型フォトレジストを使用することです。まず、ポジ型フォトレジストをスピンコートし、ベークして固体薄膜を形成、ポジ型レジストの露光にはNanoscribeの2光子重合(2PP)技術のマスクレスリソグラフィー機能を用います。現像前ベークで、その光反応を完了し、その後、プリント後の現像で露光部分を除去します。残った部分は、エラストマー複合材と高磁性微粒子濃度であらかじめ磁化された微粒子を充填するためのネガティブ・モールドとなる空洞です。その個々の磁化方向は、必要に応じて調整可能です。

この微細造形方法の肝は、光反応性を有する同じ未露光のポジ型フォトレジスト膜のマルチ・ステップ露光です。このように、最終的にマイクロデバイスの可動性と性能が調節される全空間方位に仕向けられた異なる方向磁性材料を各ステップで配列させながら成形サイクルが繰り返されます。さらに、科学者たちは異種材料で複雑な3D構造を成形するために複数のフォトレジスト膜を用意しました。すべての成形サイクルが終了すると、フォトレジスト膜は溶解し、最終的な成形構造物だけが残されます。

2PPが切り開く新たな微細造形方法

Nanoscribeの2PP技術は、マルチ・ステップ・モールディング・プロセスにおいて、磁性エラストマー複合材料による鋳造用のネガティブ・モールドを作成する際に、ポジ型フォトレジストでの3D微細造形を容易にします。さらに、2PPは、ネガ型フォトレジストで微細構造を3Dプリンティングするためにも利用され、3D造形した構造体は、既存の部品に対して正確に位置合わせされます。このように、軟磁性合成素子は、2PP造形した構造部品とシームレスに統合され、複雑なマイクロデバイスのデザインを形成することができます。

この新しい微細造形方法は、流体混合用の磁気マイクロローター、多自由度回転システム、磁気マイクロメカニカルビット(μM-bits)など、ユニークな運動や機能を実現するさまざまなマイクロデバイスで成果を上げています。µM-bitは可逆的なメタマテリアルで、2つの機械的状態が切り替えられるように調整できます。

流体混合のための革新的なマイクロローター

複雑な3D回転もモバイルマイクロデバイスの研究の一環でした。そこで、上記の微細造形方法を用いて磁気マイクロローターが作製されました。マイクロメートルスケールでの回転運動は、面内回転磁場によって引き起こされる位相協調性能を示します。

マイクロローターは、NanoscribeのIP-Sネガ型レジストを直接3D造形した剛体から構成され、直径360μm、高さ250μmです。ローターリングは磁性体NdFeB-エラストマー複合材料でできており、周囲の3D造形されたIP-S製中央基部に結合されています。

各行と列の間の位相差がπ/4になるように調整された8x8マイクロローター・アレイを作製し、デモを行いました。 さらに、40mTの回転磁界を用いて、流体の移送と混合にマイクロローターが機能することを実証しました。

多重露光成形微細造形プロセスを図解付きで順を追って説明
多重露光成形微細造形プロセスを図解付きで順を追って説明します。このプロセスでは、ポジ型レジストフィルムが使用し、Nanoscribeの2PPベース3D微細造形技術を用いて露光します。レーザー光は、現像後に空洞(グレー)を残す領域(赤)を露光します。この領域は、未硬化材料(黄色)に囲まれ、予備磁化された複合材料(黒色)で満たされています。画像: 出典はこの記事の下部を参照。
新しい2PPベースの微細造形プロセスを用いて、8x8の磁気マイクロローター・アレイを作製しました。ここでは、画像平面上で5.8 Hzで回転する40 mTの磁場下でマイクロローターが動作し、流体の移送と混合に必要な能力を示しています。
新しい2PPベースの微細造形方法により作製されたマイクロローターの設計を示す略図
略図は、新しい2PPベースの微細造形方法によって作製されたマイクロローターの設計図です。ローターリング(黒)の磁気モーメント(m)方向を白の矢印で、プロペラをシアン色で、シャフトを紫色で示しています。画像: 出典はこの記事の下部を参照。

ワイヤレス磁気マイクロデバイスの製造方法に関する科学出版物にご興味がおありですか?こちらからお読みください: Creating three-dimensional magnetic functional microdevices via molding-integrated direct laser

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動画情報

動画1 : 新しい2PPベースの微細造形プロセスを用いて、8x8の磁気マイクロローター・アレイが作製されました。ここでは、画像平面上で0.8 Hzで回転する15mT磁場下でマイクロローターが動作しています。

動画2: マイクロローター・アレイは、40mTの磁場下で、画像平面上で5.8 Hzの周波数で回転しながら動作しています。この構造体は、流体の移送や混合が可能であることを示しています。映像の回転速度は、実際のマイクロローターの回転速度の5倍です。

動画と画像の出典:  CC BY 4.0., Zemin Liu, Meng Li, et al., Nature Communications 13, 2016 (2022), doi:10.1038/s41467-022-29645-2動画と画像は、必要な形式に合わせました。

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